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「銀魂」考 第8回 成長物語

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「銀魂」考 第8回 成長物語

動物としての攻撃性と文化的抑止力
哺乳動物は脳の深いところで性欲と攻撃欲、食欲の中枢が接近しているため、これらの興奮は互いに他の中枢と関連し、性欲動は攻撃欲動と結合しやすい。このことは動物としてのヒトが本来持っているものであり、とくにオスの場合には性行動は攻撃性が高い。他のオスを縄張りから排除し、メスの抵抗を殺いだうえで性行為が営まれるからだ。
ただし人間の場合、子供が社会の中で育っていくにつれて、大脳皮質に“文化” がインプリントされてゆくことで抑止力が機能し、ヒトは次第に残酷なことができにくい生き物に成長してゆく。ヒトは、狩猟段階にあったときに濃厚に宿していた攻撃性を、農耕や牧畜を始めることによって、共同体のモラルのなかで次第にブレーキが効くものへと昇華させていった。(「キーワードでわかる最新・心理学」成田毅・編(洋泉社新書)から)


神楽4
銀魂考第6回で「神楽」という名称から「鎮魂」や「たまふり」といった役目があることを見てきました。そして第7回では、その魂の継承が銀時からなされているというのを見てきました。
今回は神楽の成長物語として銀魂を見ていきましょう。

さて、彼女の重要な特徴(設定)として「夜兎族」というのがあります。
Wikipediaの説明では以下の通り。

また夜兎族は肉弾戦の戦闘力が高く俊敏な戦い方をし、極めて残忍な攻撃をするのも特徴。そのため夜兎の本能を嫌い、人を殺めることを恐れる余り普段は無意識の内に本来の能力を抑制してしまっている。
しかし、吉原炎上篇では新八の危機に瀕した際に血の抑制が効かなくなり暴走し、戦場経験が全く無いにもかかわらず歴戦の傭兵・阿伏兎を圧倒した。自身の身体を守ろうともせずひたすら攻撃に徹し殺戮を楽しむその姿から、実際は兄同様に夜兎の血を色濃く受け継いでいることが窺え、阿伏兎に「バケモノだ」と言わしめた。しかし本人は新八の捨て身の説得により正気に戻った後自らの行為を悔やみ「自分(の本能)に勝てる程強くなりたい」と願っている。吉原炎上篇以降は「神威に自分に負けない位」強くなる為に新八と共に修行に励んでおり、かぶき町四天王篇ではその甲斐あってか西郷を一撃で倒している。

吉原炎上篇で覚醒した神楽はこの通り。
神楽 覚醒(142話)
まるで「爬虫類」のように目を見開き、本能むき出しの攻撃性を表出させている。
夜兎(やと)とはよく付けた名前で、これは「常陸風土記」に出てくる「夜刀」神のことだろうか。「継体天皇の御世、行片郡に荒地を開墾すると蛇(夜刀神・やとのかみ)がたくさんおって、害をして困るので、杭を立てて人と夜刀神の池とを分けることに定め、これだけの地は神にさしあげ今後、祟らぬように永久にお祭りをすると約束した話」がある。
つまり「夜兎・やと」とは「ヘビ」を意味しているのだろう。
これは、「やと」という名称が、ヘビ、爬虫類脳のメタファーであるということではないのか。

アメリカの脳生理学者P・D・マクリーンは、行動との関係から、人間の脳は3つの働きから階層的に構成されていると考えた。脊髄や中脳(脳幹の一部)などからなる爬虫類脳、大脳辺縁系からなる旧哺乳類脳、新皮質からなる新哺乳類脳である。爬虫類脳は、呼吸や生殖、闘争や支配など個体と種の保存にかかわる機能を持つ。爬虫類脳をとりまいている旧哺乳類脳は、喜怒哀楽と記憶を司り、比較的単純で定型的な爬虫類の働きを柔軟に変えることができる。最も外側にある新哺乳類脳は、感覚情報の処理、精密な運動制御、創造的活動を行い、遺伝的制約を越えた比較的自由な働きをする。この3つの脳は、生物の進化の流れにそって、古い爬虫類に新しい旧哺乳類脳が、さらに新しい新哺乳類脳が付け加えられるように発達してきた、とマクリーンは説明する。つまり、人間は、単純な行動を担う古い脳に新しい脳を追加していくことにより、大脳を大型化させたといえる。図解雑学「発達心理学」(ナツメ社、山下富美代・編)


脳
爬虫類脳は、呼吸や生殖、闘争や支配など個体と種の保存にかかわる機能である。
アニメ142話、神楽と戦う同族の阿伏兎のセリフから。

血の命ずるままに戦う兄と、魂(こころ)の命ずるままに戦う妹。いや血で戦う兄と血と戦う妹と言った方がいいかね。
人を殺めることを恐れるあまり、無意識に夜兎の血を抑えこんできた鎖が、仲間の危機に瀕して理性とともにはじけ飛んだか。
殺すがいい、本能の命ずるままに、どれだけ血に抗ったところで、お前は兄貴と何も変わねェ。お前は結局は兄貴と一緒なんだ。血に従って殺せ、夜兎を誇って殺せ。

面白いのは原作では「血」となっているところをアニメ版では「本能」に言い換えているところ。(またアニメ版でも、「魂」と書いて「こころ」と読ませている)
たしかに爬虫類脳の抑制力という意味では「血」よりも「本能」の方が的確だろう。
本能を抑制する力は、資料編の
第16回  自己の感情コントロール その1 アンパンマン考の続きから
第17回  自己の感情コントロール その2 資料編17回目 発達心理学から1
でまとめてありますが、少し引けば「動物が高等になってくると、むしろ大脳皮質、前頭葉が抑制をかけるということになります。人間の脳は簡単にいうと、進化的には古い脳であり生存に必要な機能を司る脳幹、情動と関係があると考えられている大脳辺縁系、学習、思考、認知などと関係する新しい脳である大脳皮質の三つの階層構造になっています。脳幹、辺縁系の本能的、情動的な働きを大脳皮質が抑制して、そのバランスで成り立っている」とある。つまり、人間の脳は、原始的本能的な脳・爬虫類脳に覆いかぶさるように、哺乳類脳や理性脳が作られていったことになる。
そして、「大脳皮質の場合は、認知、つまり学習して獲得し、こういう状況ではこんなことをしてはいけないという判断がすり込まれないと、抑制がかかりません。人間の異常な攻撃性を抑制するには、そのための教育などによる、前頭葉からの抑制の強化が必要かもしれません……(人間は)攻撃性や残虐性を持っていると考えるべきで、それゆえにこそ己の心と行動への監視や見直しを怠るべきではない」と説明がある。
なるほど、攻撃性の抑制には経験や学習が必要だということだろう。
では、その本能の抑止力は何によって作られるのか、それが資料編の
第18回  自己の感情コントロール その3 資料編18回目 発達心理学から 2 
第19回  自己の感情コントロール その3 資料編19回目 発達心理学から 3
第20回  自己の感情コントロール その4 資料編20回目 心理学も脳科学も神道もアンパンマン考も同じことを説いている
となります。

アニメ29話では、神楽が自分自身に「大人になれ!神楽」と言い聞かせている。
そして常に「強くなりたい」と願っている。
銀魂 強くなりたい
ここでいう神楽の強くなりたいというのは、肉体的強さではなく「自分自身をコントロール」する抑制力にあるのだ。
そう、本能や衝動をコントロールすることができてはじめて「人間」と呼ぶことができる。それが出来ない者は人の形をしていようが、「けもの」と同じなのだ。
そのために必要なのが、「アイデンティティの獲得」や「自律性の確立」や「道徳的価値判断を養う」ということになる。
この辺りは「資料編」で。

143話の神楽と新八と会話から。

銀さんと…約束したんだ。神楽ちゃんは僕が護る。僕が…神楽ちゃんを…僕らが信じる神楽ちゃんを護るんだ。夜兎でもイカれた兄貴の妹でもない。ぶっきらぼうで生意気で大食らいで、でもとっても優しい女の子。僕らの大切な仲間を護るんだ。お前なんかのために神楽ちゃんの手は汚させはしない、目を覚ませ神楽ちゃん!

私、負けてしまったアル。夜兎の本能(血)に…自分自身に。殺そうとしてたアル。偉そうなこと言って結局、私、あつつらと、兄貴と、何も変わらなかった。

そんなことないよ、神楽ちゃん、僕らを護ろうと戦ってくれたじゃないか。ゴメン僕が弱いばっかりに、僕がもっと強ければ…

何も見えない、何も聞こえない、ドス黒い闇の中で、聞こえたアル。お前の声が、私を護ってくれたのは新八、お前アル。私悔しい、もっと強くなりたい。みんなを護れるくらい。誰にも自分にも負けないくらい。

僕もだよ。でも今は、こんな僕らの力でも必要としてくれる人たちがいるんだ。僕らにも護れるものが今あるんだ。いつだって何かを護る度に、ちょっとずつだけど、僕ら強くなってきたじゃないか。だから涙をふいていこう。きっと僕らまた、また一つ強くなれるさ。

こんな部分を拾っても「銀魂」物語は二人の成長物語という要素が多分に含まれていることが分かる。
資料編から。

道徳的価値判断は、小さいときからの他の人々との生活(社会生活)の中で発達していく……。道徳的価値判断の基準を、他の人々の行動を観察したり、様々な社会経験を積み重ねていくうちに身につけていく。このような価値判断の基準となるものの習得は、自分の善し悪しの判断と、他の人のそれらの判断が異なっていることに気づき、その違いを解消しようとすることにはじまる……。

そして、この指導者が銀時であり、お妙であり、桂であり、長谷川さんである。(もちろん良い面ばかりではなく、反面教師としても。)
銀魂 インストラクター「147話・全ての大人達は全ての子供達のインストラクター」(全編ギャグ回だが、最後の1分にすべてが込められている。)「己の道は誰にも頼らず己で決める。修行第一関門突破だな。俺たちはいつでも見守っているぞ」というセリフとともに、彼らが神楽や新八の指南役・指導者であることに間違いない。
189話「ラジオ体操は少年少女の社交場」でも彼らが神楽をサポートし、見守っている。この保護者的視点はいつも言うところの「さわ子視点」なのだ。
「けいおん」の成長物語の説明にも使ったジェームズ・ボネット著「クリエイティブ脚本術」(フィルムアート社)から引いてみます。

①アーキータイプ(元型、典型) ヒーロー(エゴ)欲望
発生期のエゴ  今にも目覚めてヒーローに形を変えようとする時期。意識を確立するプロセスに入ろうとするのは意識自身が欲していることでもある。成長したいという望み、人生において何か意味のあることをしたいという望み、何かに貢献して、潜在能力をすべて使いという望みは意識が持っている。
問題を認識したり、責任を自覚したり、誘惑に耐えたり、幸福を分け合うといった発想は人の中から芽生えてくるものであり、それはエゴの利己的でない、ポジティブな側面であるということができる。
物語における発生期エゴは自分自身を証明する前の物語の序章の部分の主人公にあたる。「スターウォーズ」ではオビワンに出会う前のルーク、街でぶらついていたころの「ロッキー」、「羊たちの沈黙」ではレクターに会う前のJ・フォスター、「恋に落ちたシェークスピア」ではビィオラに会う前のシェークスピア。観客はヒーローを見極め、そのヒーローは観客を引き込んで、物語が推移(ヒーローの心理変化)しながら導いていく。 ヒーローがエゴの元型であればある程物語の受け手は強くヒーローに自分を重ねることになる。そしてヒーローが自分もそうなりたいと思えるような存在であったなら、その物語は受け手の人生に大きな影響を与える。

青年期は児童期と成人期の間にあり、子どもから大人へと成長していく過渡期にあって、人生の指導者を必要としているのだ。
この神楽の指導者がサムライ魂を持った銀時である。
前にも引いた、アニメ42話・神楽が父・星海坊主に宛てた手紙で「サムライ」をこう評している。

私はいま「サムライ」という不思議な連中の住む「エド」という町に住んでいます。
彼らは本当に不思議な生き物です。普段はみんな弱くって、しょぼくって、ダメ野郎ばかりなのに、いざという時は「武士道」という信念で自分をたたき上げ、絶対に折れない屈強な精神になるのです。
夜兎も人間も変わりません。みんな自分と戦っています。ここでなら自分は変われる気がします。きっと自分に負けない自分になれると思うのです……。

つまり神楽は感情のコントロールや自己のアイデンティティの確立を「サムライ」魂によって成し得ようとしているのだ。
ここが実に面白い。
「お前らと一緒にするなと言ってるアル。夜兎の血に流され戦場をさまようだけのお前らと……。私は自分の戦場は自分で決める血でなく魂(こころ)で。自分の護りたいもののために戦場に立つアル。」
そう、サムライである銀ちゃんを師匠としているのですね。
神楽は天人(外国人)であり地球人(日本人)ではない。しかし大和心を学び、サムライ魂で自己の確立を求めている。
まさに日本文化を継承する者が日本人だという説明にもかなうのだ。
第21回  「日本文化を継承するものが日本人だ、と思う。 」その2
そして、抑制力や感情のコントロールを、新渡戸稲造は「武士道」の中で「サムライ」の魂で説明し、神道では「荒魂」や「和魂」で持ってこれを説明しているのだ。
(これは資料編20回目、銀魂考の第5回)


またこれらの感情のコントロールは、家族や社会とのつながり、コミュニティーの参加によって作られていく。
「自己統制力を身につけさせるためには、親子、兄弟など、家族関係の在り方や親の子育ての仕方がどうあるべきかがまず問われることになります。」(資料編から)
銀魂 コミュニティー神楽の回りには地域コミュニティー(かぶき町や吉原)がある。
社会性や道徳的価値判断を育てるのは、「地域コミュニティー」や「共同体」が重要なのだ。
ここで、過去記事「マイケル・サンデルか池田信夫か、どちらが正しいのか? 大震災のときだけコミュニティーの大切さを問うのでは意味がない。
(これを改めて読んで自分自身が驚いた。これを書いたのが1月で、この2ヶ月後に、「東日本大震災」が起こったことになるのだから。まさかこんなことが起こるとはその時は思いもしなかかっただろうが……。)
少し引いてみましょう。

日本では戦前、神道、儒教の考え方が道徳の基礎にあった。これが戦後、否定され、伝統的な宗教の弱体化が道徳性や精神性の喪失につながっている。これを埋めていくことが社会全体として求められる。サンデル教授は、アリストテレス以来の美徳の促進を正義とする考え方を提起しながら、今、どういう共同体が可能か議論している。日本では、日本の伝統、東洋の伝統も踏まえて議論することが大事だろう。

日本には日本独自の「共同体・コミュニティー」があるのだ。いま必要なのはこういうことでは。

さてさて、銀魂を良く見れば分かることだが、銀時が護っているのは、国でも、政治体制でも、思想でもない、自分自身のコミュニティーだというのが分かる。(かぶき町四天王篇が特に)
そう、彼が護っているのは、簡単に言ってしまえばそれは「絆」なのだ。
銀時を取り巻く人たち、神楽や新八、お登勢にたま、キャサリーンたちは「血」でつながっている訳ではない。
だがその結び付きは家族以上だろう。
だから、両親のいなかった銀時と、母親を亡くし父親と離れて暮らす神楽と、これまた両親のいない新八が、一つの「家族」を作っているところに、見ている側も特別な感情を抱くことになる。
この世界で求められているのは断ち難い結び付き「絆」なのだ。

だから「銀魂」世界の根底にあるものは、「絆」であり、またそれを護るための「魂」なのだ。
したがって、少女・神楽も成長すればこの魂の継承者となるはずだ。

次回に続く。
次が最終回です。

追記 最近の「銀魂」がヒドイという話をよく聞く。たしかに「下ネタ」ばかりで、見ていてガッカリする。過去にあった「人情話」が全くないのも残念だ。
2期は「かぶき町四天王篇」と神楽回と高杉と神威の回くらいしかいいのがない。
いい加減「銀時・桂・高杉の幼少時代」とか「攘夷戦争」とか「外伝で次郎長と辰五郎」とかやってくなんないかな。
とにかく、かっこいい銀さんが見たいのだか……。
このままだと、普通の下ネタギャグアニメになってしまうよ。
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[349] 初めまして
こんにちは。いつも楽しくブログを拝読しています。皇室関係の記事が特に好きです。
追記で触れられているように、最近の原作は下ネタが多いですね。確かに私も引くことも多々あります。ですがおそらくギャグを増やしているのは長年の連載による息切れや、掲載順を気にしてのことで、仕方ないとも感じています。吉原炎上篇や四天王篇など感動するシリアス長編ではもれなくジャンプ本誌での掲載順が大下がりしていました。それは打ち切りに繋がるので、少年達に受けるネタを狙うのでしょう。また連載7年は昔の作品に比べると相当長いです。さすがに一人の作家が一週も休まずネタを考えるには限界が来ています。
今後放送を控えている長編には土方の過去、白夜叉の周知、高杉登場等があるので、物語の終わりまで見届けたいです。

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消えた二十二巻

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