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ブルーノ・タウトの「日本文化私観」その2 「芸術」の章 前編

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ブルーノ・タウトの「日本文化私観」その2 「芸術」の章 前編
前回からのつづき。
さて、今回から「日本文化私観」を書き起こします。
その前にこの本の説明。
この本は、12章から成ります。
目次は、1「床の間とその裏側」、 2「あきらめ」、 3「メランコリー」 、4「芸術」 、5「神道」 、6「味」、 7「絵画」、 8「彫刻」、 9「工芸」、 10「芸術稼業」、 11「建築」、 12「第三日本」となっています。 
書き起こすのは、4「芸術」 、5「神道」 、6「味」で、これはタウトが細かく、絵画や彫刻、工芸などを解説する前段階の部分で、文量はそれほど多くありません。
前回も触れましたが、日本文化の「美」がなぜ「神道」とつながるのか、その彼の説明が面白いので、よろしければ読んでみてください。(その部分はだいぶ後ですが)

芸術
「日本芸術」--この言葉は、日本人はもちろんヨーロッパ人やアメリカ人や、その他すべての他国民を対象とする場合、すなわち全世界をその対象とする場合において、そもそもどのような意義をもつのであるか。ある人達が静かに感慨をこめて、この日本芸術という言葉を一人で呟くとしたならば、そう云う人達のすべての心の中に、どのような感情が目覚め始めているのであろうか。
日本芸術が人類に贈ってくれた特質、しかもあらゆる世界の芸術の中にすら見出され得ない特質とは、一体何を指すのであるか。
しかもかく云ったからとて、個々の芸術や各文化部門のことを、ここではまだ語るべきではないのであって、従って建築術としての業績や種々の道具や、さらに種々の使用品の美しい形式のことを話すべきでもなく、また日本家屋の調和やさらに彫刻やまた絢爛たる色彩の襖絵のことも、それから木版のことも語るべきではないし、また劇場であるとか音楽であるとか、以上述べたような、すべて芸術がこれらのものと編み合わされていると云える、そうした一切の文化現象は、ここではまだ決して語られるべきではないのである。
ただ、日本にだけ生産され得たもので、しかも事実の上でも生産されてきているあるものがすべて上に挙げたようなものの中に、内包されていると考えるそうしたある物とは、そもそも何を指すのであるか。
この問いに対して、多分人は次のような答えをするかもしれない。
日本芸術の立派な業績は、日本以外の芸術では全く見られ得ないものを顕現する、すなわち各々の線のその流動性や、さらにむしろ即興的なとも云えるほどの技は、その様式の絶対的な厳格さ、さらにどこまでも厳粛な表現を持してーーしかも悲惨とか悲哀のごときものは少しもその姿を見せず、朗らかなーーそれでいて、そこには陽気さもなければ有頂天さなどさらにない、換言すれば様式上の限界を踏みはずすなどということは全くない、従って現実に即していてーーしかも現実そのものに貼りついたり、まつわりついたりなど決してしない、描くに筆こそ用いるがーーしかも人の手のキャラクターに則って描く色彩は、濃厚で輝かしい迫力を持っていてもーーしかも完全な意味での静けさの中に終始する、技巧とあの芸術家的な意図との一致が、木彫から工芸に至るまで、二つの手、その一つは芸術家のものであり、もう一つは職人のものであるが、この二つに手によって作られるあの一切のものに存在しーー手仕事としての技巧が頭をもたげたり、その形式を支配したりなどは決してしていないのである、これらの観念を総括して一語に示すことが出来るのではないかと思う。
それは「清純(ラインハイト)」という言葉である。
美しい(シェーン)とか清い(ライン)とかいった意味に用いられる日本の「綺麗」という言葉は、またこれと全く同じ意味を現わしている。
この清さというものは、本来どのようなところから出てきたのであるか。
以上の業績は、すべて生活難とか束縛とかいったようなものから全く離れて、その生計の資を得ているように思われる。これらの仕事は、これを芸術として今日のこの言葉の意味に当てはめることは全く当を得ていない。これらは絵画とか、その他この種のもののような特殊な方便による生活の単なる発露に他ならない。これらのものは始めに私が床の間について説明したあれと同じように、生活そのものと融合されているのであり、従ってまた、自然や宇宙ともぴったり結び合わされているものであって、どれが自然であり、どれが芸術なのであるか、ほとんど判然せぬことさえ一度や二度ではないのである。自然の一つの形である富士山、これがあたかも大作家の芸術作品のごとくに思えたり、実際におけるその山の姿など全く観たこともないはずの雪舟の山水が、蒼天や宇宙の一片のごとくに、その山をみせたりするのである。



床の間
タウトの愛した日本家屋、中でも「床の間」に日本の美と神秘性を見出した。

後編に続く。
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