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和辻哲郎「風土――人間学的考察」 第1回 日本の台風的性格 

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しばらく、「和辻哲郎「風土――人間学的考察」(岩波文庫)を引いていきたいと思います。
和辻 風土

過去記事「「アニメは日本文化を救えるか」シリーズ 第9回目 こんな感じでまとめる予定でした。」でも触れたように、和辻の風土を引用しようとしましたが、うまく要約できないのかったのは、どこを引いても面白かったからだ。したがって、重要なところをそのまま引用していくことにします。
形式としては、ブルーノ・タウト「日本文化私観」のときのようになります。
さて、第一回目は「第三章」の部分から。モンスーン的風土として大陸型「シナ」の説明に続いて、日本の説明部分を引いてみます。
「受容的・忍従的」というのが日本人を表す特徴であり、日本を代表するような、桜や竹や稲といったものでそれを説明している。

第三章 モンスーン的風土の特殊形態
二 日本
イ 台風的性格

人間の存在は歴史的・風土的なる特殊構造を持っている。この特殊性は風土の有限性による風土的類型によって顕著に示される。もとよりこの風土は歴史的風土であるゆえに、風土の類型は同時に歴史の類型である。自分はモンスーン地域における人間の存在の仕方を「モンスーン的」と名付けた。我々の国民ものその特殊な存在の仕方においてはまさにモンスーン的である。すなわち受容的・忍従的である。
しかし我々はこれによって我々の国民を規定することはできない。風土のみを抽象して考えても、広い大洋と豊かな日光を受けて豊富に水を恵まれ旺盛に植物が繁茂するという点においてはなるほど我々の国土とインドはきわめて相似しているが、しかしインドが北方は高山の屏風にさえぎられつつインド洋との間にきわめて規則的な季節風を持つのとは異なり、日本は蒙古シベリアの漠々たる大陸とそれよりもさらに一層漠々たる太平洋との間に介在して、きわめて変化に富む季節風にももまれているのである。大洋のただ中において吸い上げられた豊富な水を真正面から浴びせられるという点において共通であるとしても、その水は一方においては「台風」というごとき季節的ではあっても突発的な、従ってその弁証法的な性格とその猛烈さとにおいて世界に比類なき形を取り、他方においてはその積雪量において世界にまれな大雪の形を取る。かく大雨と大雪との二重の現象において日本はモンスーン域中最も特殊な風土を持つのである。それは熱帯的・寒帯的の二重性格と呼ぶことができる。温帯的なるものは総じて何ほどかの程度において両者を含むのではあるが、しかしかくまで顕著にこの二重生活を顕すものは、日本の風土を除いてどこもにも見いだされない。この二重性格はまず植物において明白に現れる。強い日光と豊富な湿気を条件とする熱帯的な草木が、ここでは旺盛に繁茂する。盛夏の風物は熱帯地方とほとんど変わらない。その代表的なるものは稲である。しかるにまた他方には寒気と少量の湿気とを条件とする寒帯的な草木も、同じく旺盛に繁茂する。麦がその代表者である。かくして大地は冬には麦と冬草とに覆われ、夏には稲と夏草とに覆われる。しかしかく交代し得ない樹木は、それ自身に二重性格を帯びて来る。熱帯的植物としての竹に雪の積もった姿は、しばしば日本の特殊の風物としてあげられるものであるが、雪を担うことに慣れた竹はおのずから熱帯的な竹と異なって、弾力的な、曲線を描き得る、日本の竹に化した。
風土のみを抽出して考察した場合に見いだされるこれらの特徴は、具体的には日本の歴史的生活の契機である。稲及びさまざまの熱帯的な野菜や、麦及びさまざまの寒帯的な野菜は、人間が自ら作るのであり、従ってそれに必要な雨や雪や日光は人間の生活の中へ降り込み照らし込むのである。台風は稲の花を吹くことによって人間の生活を脅かす。だから台風が季節的でありつつ突発的であるという二重性格は、人間の生活自身の二重性格にほかならぬ。豊富な湿気が人間に食物を恵むとともに、同時に暴風や洪水として人間を脅かすというモンスーン的風土の、従って人間の受容的・忍従的な存在の仕方の二重性格の上に、ここにはさらに熱帯的・寒帯的・季節的・突発的というごとき特殊な二重性格が加わってくるのである。

まずモンスーン的受容性は日本の人間においてきわめて特殊な形態を取る。第一にそれは熱帯的・寒帯的である。すなわち単に熱帯的な、単調な感情の横溢でもなければ、また単に寒帯的な、単調な感情の持久性でもなくして、豊富に流れ出でつつ変化において静かに持久する感情である。四季おりおりの季節の変化が著しいように、日本の人間の受容性は調子の早い移り変わりを要求する。だからそれは大陸的な落ち着きつきを持たないとともに、はなはだ活発であり敏感である。活発敏感であるがゆえに疲れやすく持久性を持たない。しかもその疲労は無刺激的な休養によって癒されるのではなくして、新しい刺激・気分の転換等の感情の変化によって癒される。癒された時、感情は変化によって全然他の感情となっているのではなく、依然としてもとの感情なのである。すなわち感情は変化においてひそかに持久するのである。
第二にそれは季節的・突発的である。変化においてひそかに持久する感情は、絶えず他の感情に変転しつつしかも同じ感情として持久するのであるがゆえに、単に季節的・規則的にのみ変化するのでもなければ、また単に突発的・偶然的に変化するのでもなく、変化の各瞬間に突発性を含みつつ前の感情に規定せられた他の感情に転化するのである。
あたかも季節的に吹く台風が突発的な猛烈さを持っているように、感情もまた一から他へ移るとき、予期せざる突発的な猛烈さにおいて現れた。それは執拗に持続する感情の強さではなくして、野分のように吹き去る猛烈さである。だからそれはしばしば執拗な争闘を伴なわずして社会を全面的に変革するというごとき特殊な歴史的現象さえ作り出している。さらにそれは感情の昂揚を非常に尊びながらも執拗を忌みという日本的な気質を作り出した。桜の花を持ってこの気質を象徴するのは深い意味においてもきわめて適切である。それは急激に、慌ただしく、華やかに咲きそうろうが、しかし執拗に咲き続けるのではなくして、同じように慌ただしく、恬淡に散り去るのである。

季節の変化と、突如として猛威を奮う台風が、日本人の性格形成に大きく影響している。自然が与える良い面と悪い面の二重構造が、日本人の宗教観に大きく影響している。これを和辻は「風土」としてこれを説明している。
そして、それが日本人の精神・神道に反映しているということなのだろう。

……続く。
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