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宮部みゆきを読むには「覚悟」がいる

物語を物語る

以前、宮部みゆきにハマったことがあります。
「魔術はささやく」からはじまって、「レベル7」「龍は眠る」、短編集の「返事はいらない」「とり残されて」、そして、時代小説の「本所深川ふしぎ草子」「幻色江戸ごよみ」、初期の代表作「火車」と、宮部みゆきが書いた本は、読みまくりました。
ただ、最近は宮部みゆきの本を、読むのに「覚悟」がいるようになった。
それは「理由」「模倣犯」あたりからだろうか。いやその少し前の「クロスファイア」ぐらいからだろうか。近年のものは、手軽に読ませてくれない。軽い気持ちで手を伸ばすと、読後は打ちのめされたように腑抜けにされてしまうからだ。
まあ知っての通り、宮部みゆきの筆力は凄いので、すぐに彼女の書いた世界に引き込まれてしまう。物語の中に引き込んで、その世界に浸らせて、酔わせてくれればそれは、エンタメ小説として申し分ない。それならいいわけだ。
だが、それだけでは済まない。最近の宮部みゆきの作品には残虐な場面が多く、それが妙に現実感があるから、やっかいだ。
ほかに「残虐」を細密に書く作家は多くいる。またそれを書いて愉しんでいる作家もいる。
だが、同じような場面だとしても、宮部みゆきは、それら数多の作家とは明らかに何かが違うのだ。
宮部みゆきの小説は、状況設定、人物造形が精密なので、違う作家が同じような場面を書いたとしても全く密度が違うものになる。それだけに登場人物に現実味が増して、その行動にも真実味が加わってくる。登場人物の行為に説得力があって、「物語」を読んでいるというよりも、「現実の出来事」を読んでいるような感覚を得るのだ。
例えば、残虐場面で、登場人物が首を絞められると、読者も苦しくなり、その人が刺されると、自分も痛いという感覚を味わうことになるのだ。だから殺されると、自分も殺されたようになってしまうのだ。
よくこんなテレビ番組があるでしょう。超能力者が殺害現場に行って、その時の被害者の様子を再現してみましょうっていう番組。その超能力者は、被害者が殺害されたときの様子をいま見たように語る。またはその本人のように「うー苦しい」といってもがく苦しそうなことになる、そんな場面を思い出して見てください。その超能力者が直接感じ取ったような苦しみを、宮部みゆきの小説で読者(わたし)は味わうことになるんです。淡々と描写されているだけに余計に感じる。
これをブラウン管(いまは液晶かプラズマ?)を見ながら、煎餅を齧って「まあ、可哀想ね」なんていっている、第三者的傍観者の立場に置かせてくれないのだ。
私はいま被害者の立場で書いている。
そう、宮部みゆきは被害者の立場になって書いているのだ。
それは作家の視点や、心情が被害者側に寄っているからではないか。作者が被害者の立ち位置にいて書いているので、読んでいて残虐場面がよりきつく感じられるのだろう。たとえ、そのとき加害者の行動や心情を綴っていたとしても、作者に犯罪を憎む心が根底にあるので、決して加害者の側に寄っていかないのだ。それは、残虐行為に及ぶ犯罪者を憎んでいるからだろうか。そのことは「模倣犯」の最後のセリフに込められていると思う。(確か、娘のいる母のせりふだった)
残虐場面を描く作家の多くは、少なからず暴力を描くことを愉しんでいる。例え、犯罪、暴力反対を唱えた小説でも、そういう暴力場面では、リアルに書こうとすればするほど、その犯罪や暴力を加える者の立場になって書いてしまうものだ。
例えば、映画「プライベートライアン」でスピルバーグは反戦を訴えた。戦争の愚かさや悲惨さを伝えたかったはずだ。ただ、冒頭の20分くらいの戦闘シーン。あれは、スピルバーグは愉しんで作っている。物語上、あまり意味のあるシーンではないが、一番インパクトのある場面となっている。戦争反対、暴力反対を唱えながら、冒頭シーンは完全に暴力に酔った場面となっている。(ただし、私はこの映画は好きだ)
つまり、反戦映画でも、戦争(暴力)に酔うことがある。
だが、宮部みゆきにはブレがない。残虐場面を描いてもその行為を犯す者を憎む心情が常に根底流れているのである。
それゆえに、残酷な場面がよりきつく際立って、物語で被害者が受ける暴力に読者は同じような衝撃を受けてしまうのだ。

「楽園」は「模倣犯」の続編的作品であるという。ゆえに「楽園」を読むには相当の覚悟が必要となるだろう。

ちなみに、宮部みゆきの本では「蒲生邸事件」が一番好きです。
SFあり、謎ときあり、「226事件」あり、そして涙あり、物語としても最高です。


追記  また、警察犬が語り手だったり、財布が主人公だったり、双子の男の子の泥棒の話とか、奇妙な設定の小説書いてくんないかな。大作もいいけど、たまには初期のような軽い話も書いて欲しいなあー。結構、味があっていいんですけどねー。
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