スポンサーサイト

物語を物語る

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

歴史ミステリー小説「東毛奇談」第6章 7

物語を物語る

「それは、小栗が幕府の御用金を持って行ったと世間が信じることにより、得をする人間だいうことでもあります」
「ここで、一つ状況を想像してみようじゃねーか。今、ここに幕府の御用金があり、これを隠したい。ただ隠しただけなら東征してくる官軍に追及されるだろう。確実に御用金は巻き上げられ、幕府側には一両も残らない。そこで小栗が勝手に持ち出してどこかに埋めちまった。そしてその行方を知る小栗がこの世にいないとすれば……」
「幕府の御用金はそのまま計画者のもとに残ることになるわ」
「この計画者こそが勝海舟でしょう」真船は力強く言った。
同意見の弦さんが話を続けた。「そうだそこで噂を本物らしく見せるために、わざとらしく形跡を残して置くんだ。いかにも埋蔵金があるかのように、見つかり易いような痕跡を残すようなことまでしているんだ。噂を伝説とするためにな。そのためにはもっともらしい暗号やら八門遁甲やらの装置も必要だ。この場合は八門遁甲みたいのが一番いいだろうな。その理由は誰も解けないからだぜ。謎というのは分かるか分からないかぐらいが丁度いい。その方が人は引き付けられるのさ。その辺りはは龍ちゃん分かるだろう」
「ええ、番組スタッフはみんな埋蔵金が赤城山にあるという前提で、謎解きゲームをしているようね」
「弦さんの言う通りですね。幕末徳川埋蔵金は、これまでの埋蔵金伝説にある豊臣家の埋蔵金や武田家の埋蔵金とは違い、年代が大分下がっていて、八門遁甲など使う自体、時代錯誤のような気がしてならないんです」
「つまりは、埋蔵金伝説に不可欠なものは暗号やら言い伝えだろう。だからさ、埋蔵金伝説を本物らしく見せるためにも八門遁甲などが出てくる必要がある。あまりにも作為的なんだ。まあ徳川埋蔵金が今もどこかに眠っていることを信じる者たちにとっては、それが落とし穴になっているんだ。それも埋蔵金にロマンを感じる奴にはいいだろうがな……。よく考えれが分かることだぜ。この場合、埋めてから誰も解けない暗号など、必要ない。潰れた幕府にも維新後に金は必要だったんだから。よしそれでは、テレビ番組で紹介された徳川埋蔵金伝説のあらましを龍ちゃん読んでくれ。これがどれほど間抜けであるか分かるから」
「はい。要点だけを言っていきます。
1866年慶応2年、前橋藩士と称する一団が、赤城山の津久田原に入って開墾を始めた。
翌年、利根川の川辺に十艘の小船で、油樽が陸揚げされるのを地元の人が目撃した。
1870年明治3年、徳川幕府御用金400万両が赤城山山麓に埋めてあるという情報を、旧幕府御用人の中島なる人物が、アメリカ人に発掘権を売った。
明治20年以後、津久田原に水野家が住み着き、発掘を始める。赤城山近くにある双永寺から銅版が発見され、これが埋蔵金を解く鍵といわれる。それに水野氏は土の中から家康像を発見し、ここに埋蔵金があることを確信した。というのが大体の流れです」
「これ以後、100年以上も掘り続けて、今ではテレビまで巻き込み、金属探知機や地中レーダーを使っても、埋蔵金の『ま』の字も見つからない。アタリめーだ、そんな所にあるわけがない。闇雲に掘れば出てくるっていうもんでもあるめぇー」
「この伝承の問題点は、ここに幕府高官や、官軍・明治政府の要人の名前が全く出てこないことです。政治の中心である江戸城の御用金の話ですよ。御用金がいくらあったかは分からないが、どこかに小栗以外の大物が絡んでこなければならないはずです。それが、この赤城山埋蔵金伝説のどこを見ても、下っ端役人や農民の証言だけですべてが成り立っているんでよ。これは豪商や大名の埋蔵金の話ではないんですから……」
「確かに、登場人物が胡散くさいわ」
「それにここに出てくる双永寺というのは、徳川とは何の関係もありません。しかも幕府の財政を担う御用金という重大なことを解く鍵が、こんな訳もわからない寺の軒下から発見されること自体がおかしなことなるんです」
「それによー、家康像を地中に埋めるなんてことは当時としては考えられないことだ。東照大権現として祀られている家康だぜ、幕府の者がこんなことをすれば大変なことになる」
「何故、赤城山なんでしょうか。群馬といえば山、埋蔵金というものは山奥に隠すといった短絡的な発想しか見えてこないですね」群馬在住の真船には素朴な疑問だった。
「そうだな。徳川埋蔵金伝説は、その場所が赤城山や沼田など漠然とし過ぎている。幕府の命運を握る御用金を隠すにしても監視や防衛機関が何もない。これはおかしなことなんだぜ。誰かに見つけられたとしても、隠した本人も気付かないじゃ意味がない。何が言いたいかというと、監視役やそういった施設があるような場所でなきゃ隠した奴も安心できないだろう。そう考えていけば、この徳川埋蔵金伝説は矛盾が多いということさ。だいたい現在でもこんな怪しい説を基に番組を作ろうなんて無謀だぜ。子供の宝探しごっこじゃないんだぜ」弦さんの声に怒気が含まれている。明らかに何かに向かって怒っている。それは無いものを有るかのように見せるテレビに怒っているのかもしれない。それとも視聴率のために山を掘り起こす金があるなら、まともなドラマを作れと言いたいのだろうか。
「現代からみれば、徳川幕府は、倒れてしまったけど、幕末や明治政府樹立当時の時代背景を考えれば、そのときはこれから先どうなるか分からない。だから赤城山の山深くに埋める必要がないですよね。つまり山に埋めてしまうと機動性を失うことになるわ」
「そうだ。山に埋めるには、時間も人力も必要だし、あの幕末時期にそれだけの余裕があったかな。幕府の御用金は一時的に隠す必要はあったが、幕府再興を願い後世のために山に埋めたり、挙句にどこへ隠したか分からなくなってしまってはならないはずだ。ここは重要だから何度も繰り返すが、みんな金を必要としていたからな。官軍も幕府もだ」
「そうなると、やっぱり幕府御用金は一時的に隠され、その後使われ今は存在しないということになるわけね」琴音が弦さんに確かめるように聞いた。
「俺の考え着いた説だとそうなる。千ちゃんも同じだな。まあ俗説のように360万両もないだろうが、ある程度はあったんじゃねーか。当座の費用ぐらいな。どこに使ったのかは後で説明するとして、先に、いつ運び出して、どこに一時保管されたかを考えてみな。龍ちゃんどこだと思う?」
「うーん、今は分かりせん」

スポンサーサイト

Comment

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

«  | HOME |  »

カスタム検索




FC2ブログランキング


すみません…、只今コメ返しをしておりません。しかし、しっかりと読んでおります。こんなわがままなサイトですが、気が向いた方は、どうぞ書き込んでください。

FC2ブックマークに追加

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

Wikipedia
developed by 遊ぶブログ
物語を物語る
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月 --日 (--)
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
物語を物語る
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2007年09月 03日 (月)
  ├ カテゴリー
  |  └ 歴史ミステリー小説「東毛奇談」
  └ 歴史ミステリー小説「東毛奇談」第6章 7
by AlphaWolfy

消えた二十二巻

Author:消えた二十二巻


全ての記事を表示する




このブログをリンクに追加する
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。