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大佛次郎の「帰郷」と、なぜかアニメ「ちはやふる」の2期決定

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ドナルド・キーンの記事のとき大佛次郎の「帰郷」の話が出ていたので、読んでみた。
過去記事 ドナルド・キーン自伝から。 日本文化を護るために取るべき道は何なのかを考えてみた

よかったですよ。一言感想を言えば、和辻哲郎の「風土」にある日本的風土を小説化すればこういう風になるのではないか、ということ。ほかに本に関するレビューはアマゾンとかにいいのがあるのでそちらを。(ただし小谷野敦のは当てになりませんので)
では、一節引いてみましょう。

庭の泉水の流れる音がしていた。電灯の輝く下に、畳の上にいて、水のせせらぎの中に坐っているようなものであった。京都でも加茂川の流れの音を聞く例の旅館のほかに、方々の庭でこの忍びやかな水の音楽が、あたりの静けさをいっそう深めているのを聞くことが多かった。ただ一本の古竹を渡した筧(かけい)から滴り落ちる水の音の場合さえある。考えてみれば、外国人の生活にはけっして見られないことであった。どうして昔の日本人が、寝ても起きていても、こうして不断の伴奏のようにして水を聞くのを好んだのか。
考えれば、変わった趣味であった。それももとより、水道の栓を開き放しておくのでは誰れだって我慢しないのだから、やはり水の音でも天然に近いものを聞こうと構えるのだった。人工で作るとしても、なるべく自然の趣きを損なわないように用意するのだ。青銅や大理石の彫刻した群像の立つ噴水のさかんに水の落ちる音とは違う。水を引く意欲は働いていながら、つつましくそれを隠そうと試みる。不思議な民族的習慣なのである。
近代の公園の噴水を俗のものだと感じる点では日本人は共通しているのではなかろうか?日本にある人工の噴水が、どれも趣味も出来も悪いのとは別の話である。
パリあたりの美術的にでき上がったものを見せても、壮麗さを感じても、これはただそれだけのもので、それ以上の奥行も深みもないと感じるのに違いない。それにもかかわらず、堀貫井戸に湧く水の小さい囁きに、佇んで聞き入る日本人は多い。人間の意欲が露わになるのを嫌うのである。生活に制縛されて貧しいものに悦びを見出すのに慣れたというだけのものでなく、祖先から代々血の中に養われてきた特殊な感覚に違いない。外国人にはなく、断絶させてしまうのは、惜しい遺伝なのである。美しくないと誰が言えるであろうか。

小説の中には、こういった日本人の美的感覚や日本の風土に関する記述がかなりある。それがいいのだ。鎌倉、京都、箱根といった場面での日本の風景の描写も素晴らしく、筋そのものよりもそちらに引かれてしまった。
それに「ダイヤモンド」や「汚くない塩」や「サイコロ」といった小道具の伏線の張り方にも、小説家としての上手さを感じました。

さて、こういった日本人の美意識や風土については、当サイトではブルーノ・タウトや和辻哲郎のときに触れました。日本の風土を小説化したのはいくつもありまりますが、その代表格として「帰郷」が挙がるでしょう。そして、その日本人の美意識が現代のアニメにも受け継がれているというのが私の持論です。詳しくは関連記事で、
1、和辻哲郎の「風土」 第五回目 日本の四季とアニメ
2、「アニメは日本文化を救えるか」シリーズ 第9回目 こんな感じでまとめる予定でした。
3、「銀魂」考 第3回鎮魂とカーニバル その3 「桜は死と再生の樹」と「国ほめ」

追記、アニメ「ちはやふる」の2期が決定という報を聞きました。
これはいいニュース。今秋からか、今から楽しみだな。

小説「帰郷」と関係ないって?
そんなことはない、表現形態は違えども、ともに「国ほめ」なんですよ。
私の中では、「帰郷」と「ちはやふる」は同じカテゴリーに入ります。
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