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歴史ミステリー小説「東毛奇談」 終章 8

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「ここに来たということは、答えは揃ったというわけだな。よし、その様子ではお前たちはそれぞれ新田の末裔であることは分かっているようだ。これでようやく話もできる。もう間に合わんかと思ったぞ」
「どういうことですか。私たちを引き合わせた理由も教えてもらわないと」琴音は相変わらず冷静に聞いた。
「その前に、世良田東照宮はなぜ東を向いているのか?という問いは分かったんだろうな」
「はい、それには自分が答えます」といって真船は日本地図と何か本をバックから出した。少しは落ち着いたようだ。
「神社や寺社を建てるときに大切なのは、方角であるといいます。
この方位、方角については、中国の風水の考えが基本にあります。これが日本に輸入されて、古来より重要視されてきました。例えば京の都である平安京や平城京もこの考えに則って作られたいわれます。それが東照宮にも応用されている、と見るのは自然なことでしょう。とそれではここで日光東照宮の文庫長である高藤晴俊氏著の『日光東照宮の謎』に拠りましょう。まず家康が祭祀の場所として指定した日光や久能山はある目的をもって選ばれているというのです。問題なのはその位置や方位、拝殿の配置などです。よく日光が江戸城のほぼ真北に位置していて、陽明門からの写真を見たことがあるでしょう?」と琴音に尋ねた。
「ええ、北極星を望むようにしているから陽明門を中心にして星が巡っているように見えるわ。日光東照宮の紹介で必ず出てくるわね」
「そうです。それに江戸が風水の呪術的力によって守られているという話も有名でしょう」
「確か、鬼門の位置に寛永寺を建てて、神田明神を移動した。裏鬼門は増上寺と日枝神社が押さえたということだったわ。それに他の神社や寺も江戸城を霊的防衛の目的を持って配置されていると、弦さんから聞いたことがあるわ」
「それらを踏まえて、日光東照宮が何らかの意味を持っていることは間違いないといいます。そこで改めて、高藤氏の説に従います。まず第一に日光と江戸を結ぶ道、これが北辰の道といわれるもので一路真北に位置する北極星を目指しています。北極星は星の中心で、すなわち宇宙の支配者です。家康を北極星と見なして、神格化しようとしています。そして第二ラインに久能山から日光へのラインがあり、不死の道と呼んでいます。この久能山の拝殿が日光の方角を向いているというのです。したがって久能山拝殿を拝むことは日光を拝むのと同じであるといいます。またこのライン上に世良田も位置していることが重要であるとも指摘している。そして第三のラインが久能山から真西に延びる線。家康は、久能山の神像を西に向かって安置するように命じていて、実際久能山神廟は西に向かって建てられている。この方角には、家康ゆかりの鳳来寺山や故郷の岡崎を通って、そのまま真っ直ぐに京都に突き当たります」
「なるほど日光や久能山の東照宮の位置は意味があるわけね。そしてこれらを結ぶラインが重大な意図を秘めているわけか」
「答えは近いな」と雨月は確信したように呟いた。
「それに江戸城内の紅葉山の東照宮は南南東向き、この線の延長上は北北西であり、ここから拝むと、赤城山を目指して世良田を指し示すといいます」
「ここで世良田が出てきたわけね」
「さて、そこで世良田東照宮がなぜ東を向いて建っているか、です」ここで真船は雨月をきりっと睨んで話を進めた。もう臆する気持ちは消えたようだ。
「龍舞さんには前回説明しましたよね。日光東照宮から世良田に移築されたことが、本当かどうか疑われたことがあった、ということは」
「それは学術調査で間違いないという話でしたね」
「世良田東照宮の柱や木材に南や北など方位を指定したものが書かれていて、それが日光山に建てられたときに書かれたものと判明したんです。だけどここで疑問が残ることがある。日光に建てられた時、南と指定されていたのもが、ここでは別の方角を向いていて、日光と世良田に建てられた方向が全く違うことも分かった」
「でも単純に、日光とは地形も違うし、世良田の土地との関係とかではないの」
「そうかもしれないし、別の意味があるのかもしれない。いや、雨月さん、きっとそこに重大な意味があるというんでしょう。わざわざ拝殿を東向きに方角を変える意味が……。普通に考えれば、日光や江戸の方向を向いて建てるのが自然でしょう。しかし実際はそれが全く違う。これはおかしなことです。では東照宮を主導する天海が世良田の地に入り、日光の東照宮を移築し、方角を変えて建てた理由が他にあったということになるでしょう……」
真船に面と向かって質問されても雨月は全く動じる様子がない。分かっているなら答えを早く言えといった感じであった。
「それは拝殿を拝むとどの方角になるかが問題なんでしょう」と琴音はたまらずに答えた。
「姫は鋭いな」と今まで黙って二人のやりとりを聞いていた雨月が合いの手を入れた。
ここで真船は日本地図を広げて、解説を始めた。「では、世良田東照宮が東向きに建てられてるのならば、西に向かって拝むことになります。それでは、地図で、その先に何があるのか確認してみましょう。群馬県尾島町世良田を西に向かって直線上に進むと……」と真船は左手の指で右から左になぞって行く。そして、ぴたりと指が止まった。
「ここは……、福井県福井市じゃない」琴音は驚きの声を上げた。
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by AlphaWolfy

消えた二十二巻

Author:消えた二十二巻


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