「フットサルでオウンゴール6発、「負けろ」指示」で思うこと。
物語を物語る
毎日新聞 平成21年4月10日活動停止:フットサルでオウンゴール6発、「負けろ」指示 新潟の中学教頭を処分
日本サッカー協会(犬飼基昭会長)は9日の理事会で、1月に開かれた「新潟県選抜中学生フットサル上越地区大会」(新潟県協会主催)で、故意に負けるよう選手に指示した同県内の公立中学校教頭のサッカー部コーチ(47)を、1年間の活動停止とする処分を決めた。処分は試合当日(1月12日)にさかのぼって適用される。
日本協会などによると、この中学校のチームは予選リーグを1試合残し、決勝トーナメントに進む上位2位以内を確定させていた。1位で通過すると決勝トーナメント準決勝で苦手チームと当たる可能性があるため、教頭が予選リーグ最終戦で大敗するよう指示したという。選手は自陣に6連続オウンゴールを記録するなどし、0-7で敗れた。教頭は「教育的配慮を欠いた。反省している」と語った。【
この件で一言。
映画「勝利への旅立ち」(1987)にこんなシーンがある。
高校バスケチームのコーチ(ジーン・ハックマン)が、格上の名門チームを相手にして気落ちする選手たちに向かってこんなことを言う。
「たとえ負けても全力を出し切れ。スコアーに関係なく勝者になれる。」
また俳優マーク・ハーモンがこの映画のコメントでこう言っていた。「勝利を描いた映画がテーマだが、成長とは何かを描いた映画。試合に勝つことじゃなく。それぞれの選手が何かを達成することが重要なんだ」
スポーツを見て感動するのは、こういった「熱意」やら「情熱」やらを目にした時に起こるのものなのだ。そして、それを行った当事者たる選手たちも何らかの達成感を得られるはずだった。そこにスポーツの原点がある、と思う。しかしこの教頭先生はこれを、「目の前の勝利」に惑わされ、上位的立場から「指導」という名の権力によって、これを奪い去った。こんな人は決して「教育者」とは言えない。
また、テレビのコメンテーターがこの件に関して「別にルール違反を犯していないのだからいいじゃないか」と言っていた。(テレビ朝日「ワイドスクランブル」の福岡翼)
それは違うだろう。
スポーツをしたことがある人ならこんな発言は出ないし、選手たちの気持ちを慮っている言葉とも思えない。
それにこの件に関して「2ちゃんねる」を見ると、「わざとオンゴールした選手たちは、教頭への抗議の意思を表すために6点も自分のゴールに入れたんだ。あれは、無言の抵抗だ。」と書いてあった。確かにそういったことでしか意思表示はできないだろう。それに、この無言の抵抗をあったればこそ、この件が表沙汰になった。
この件で思うのは、これは、「勝てば何をしてもいい」という世の中の風潮を象徴しているような気がしてならない。ひいては、「勝てばいい」「儲かれば何をしてもいい」「自分さえよければいい」といった世の中の流れにつながっているようだ。
また、これを教頭先生ともある教育現場の人がやったのだから余計に性質が悪いと言えるだろう。
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