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日本人にとって食とは

物語を物語る

何となく前回の補足、日本人の食に対する考え方を、安岡正篤「日本精神通義」(昭和11年刊行の現代語復刻版・エモーチオ社)から引いてみました。

食物でもそうであります。西洋の食物は我々が活動をするのに、すなわち功利的あるいは合理的にできています。何カロリーの熱量、蛋白質、含水炭素、脂肪云々の栄養素、そういうものをこれだけ、摂取すれば良いというふうにできております。しかるに中国料理や日本料理を見てまいりますと、食物が単に食物ではない。栄養素や熱量を摂るのみが目的ではない。中国料理をご覧になると判るりましょうが、いろいろ我々の純粋味覚の満足あるいは精力の蓄積などいわゆるエロやらグロやらの要求をも統一して、そうして未だ純化されないところの食物なのです。
その複雑な要求がさらによく純化され、統一向上されておるという点において、日本料理のごとく世界において深遠なるものはないと思います。日本の食物は人間の肉体の栄養、熱量を摂取するのみならず、また味覚を満足せしるのみならず、あるいは我々の精力を養い、病を治すものたるのみならず、食膳に大自然を再現する芸術なのであります。箸を一つ取りましても、箸によって木を味わい、木の持つ「朴」(うわべを飾らない。素直)の哲学、人間の永遠性の原理を楽しむのであり茶碗に土を味わい、お匙に散蓮華を偲ぶ。したがって食うことも単なる食にあらず、人格生活の一部分になっているのです。
茶を一つ飲むにいたしましても、茶は決して渇を癒すというような単なる生理的満足でなく、茶というものによって我々が精神生活を行う人格的に深い要求を満たすということがあの中に含まれております。したがって茶道というようなものになってまいりますと、実に幽玄なもので、その至れるにおよんでは例えば井伊家に先ほど挙げました直弼の好んで行いました一期一会の心得があります。一期一会とはすなわち一生涯に一度会うことで、風炉の前に主客が端座する時、その時今生においてこれ限りかも知れぬ、人命というものは朝露のごときものである、朝あって夕を図ることができぬ、ここで会えばまた会うことは人間として期することができぬ、今生にこれを限りと思う気持ちになる。そこで汲むと人間はふざけた心、雑念というものが悉く脱落して真心が現れる。その真心をいうのがあの一期一会の有名な精神であります。こうなりますと、茶を飲むということは物質的問題にあらずして、深遠なる悟道の問題であります。

日本の食物に至っては単なる食物、単なる栄養を摂る、あるいはエネルギーを、熱量を得るというだけでなくして、観るもの嗅ぐもの、考えるもの、すなわちいろいろ薬物的、芸術的、思索的、さまざまな要求を含くめてできている。
非常に複雑な価値的性質のものになっております。だから料理というものも道になっている。料理道になっている。禅家では典座というものがあります。禅僧の炊事係です。これは最も老熟した雲水をもってこれを充てる。つまり終始坐禅し、思索するため健康を損ない易い雲水を、食物の上から援けてやるようにできているのであります。だから、修養のできておられない者や注意のこまやかにとどかぬ素笨(そほん、意味:あらくて雑なこと)や野狐禅(やこぜん,意味:禅を学び、まだ奥義を究めていないのに、自らは悟道に入ったと自負するもの)の輩ではできないこととされるのです。

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by AlphaWolfy

消えた二十二巻

Author:消えた二十二巻


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